日本での事例:大型総合病院建設におけるStreamBIMの導入

目次

Yoshinori Todaの写真
戸田 善憲

3Dビュー:IFC及び点群データを表示

このプロジェクトの特徴として、総合病院施設の建設であるがゆえに、各診療科や部屋ごとに異なる機能や設備要件が求められました。そのため、設計や工事の段階で、実際に現場を利用する医療従事者や施設管理者から細やかな意見を収集し、着工後の総合図作成時にも十分な合意形成を図ることが非常に重要となります。また、このプロジェクトは公共工事であるため、一般的な一式請負契約ではなく、工事監理、建築工事、機械工事、電気工事、医療機器など、分野ごとに個別契約が締結されました。その結果、建築主と直接契約を結ぶ業者が多数存在し、各工事の分担や変更要望の調整が複雑になることが予想されました。多様な専門分野の関係者が関与することで、協働作業や合意形成の重要性が一層高まりました。こうした課題の対応策として、CDE(共通データ環境)アプリケーションStreamBIMの活用が提案され、発注者と施工者間で請負契約が正式に成立しました。

ペーパーレス化の推進:StreamBIMによる情報共有の効率化

建築工事の請負業者による技術提案の段階で「StreamBIM」の活用が明記されていたため、プロジェクト開始時にツール選定で悩む必要はありませんでした。一方で、多くの請負業者にとってはCDE(共通データ環境)アプリケーションの利用が初めての経験であり、新たな運用方法への対応が求められました。勉強会を通じて、まずは簡易な操作から導入を開始しました。基本設計段階で作成された3DモデルをStreamBIMに登録し、関係者が各自のデバイスで閲覧できる環境を整備。さらに、毎週開催される定例会議では、従来メールで事前配布していた資料をStreamBIMに格納する運用へと変更しました。

手書き情報も課題リストに登録し対応先の確認会

ラベル検索機能(ラベル名:「当日打合せ資料」)を活用することで、必要な資料を即座に参照できるようになり、情報共有の効率化とペーパーレス化が大きく前進しました。

進捗の「見える化」:2D図面とStreamBIMの融合による現場運用

日本国内では依然として2D図面による確認が主流であるため、本プロジェクトではBIMモデルを補助的な参考情報として活用しました。各フロアの平面詳細図やプロット図は、総合図確認会で関係者からの要望を直接ヒアリングし、その場でStreamBIMに記録。会議終了時には、各課題の対応担当組織を明確にする運用としました。要望内容は、2D図面に手書きで記入したうえで、その画像をStreamBIMにアップロードし、対応タスクとして起票。各部屋の確認が完了したものについては、StreamBIMのチェックリスト機能を活用し、BIMモデル上のスペース情報(空間)に紐づけて情報共有を行いました。進捗状況は、完了項目を緑色、未完了項目を赤色で表示することで、視覚的に把握しやすい「見える化」を実現しました。

チェックリスト機能2D画面
任意のPDF図面との重ね合わせが可能

要望内容は、2D図面に手書きで記入したうえで、その画像をStreamBIMにアップロードし、対応タスクとして起票。各部屋の確認が完了したものについては、StreamBIMのチェックリスト機能を活用し、BIMモデル上のスペース情報(空間)に紐づけて情報共有を行いました。進捗状況は、完了項目を緑色、未完了項目を赤色で表示することで、視覚的に把握しやすい「見える化」を実現しました。

課題管理の進化:リアルタイム共有と進捗の可視化

設計期間中に医療従事者や施設管理者の要望を確認し、設計図書に反映していたとしても、建設工事開始後に作成される総合図を確認する際には、より具体的な利用をイメージした多くの変更要望が発生します。従来は、担当者が資料をサーバーに格納し、文書を作成、CCメールで情報共有を行い、課題管理表を個別に作成・管理していました。

課題の進捗状況は担当者による手動更新が必要であり、情報の把握に時間を要するケースが多く見られました。この状況を改善したのが、StreamBIMのキャプチャー機能です。関係者は操作方法を習得し、課題ごとに起票、対応依頼者の指定、手書き資料は画像で添付を行いました。登録された課題はデータベースに蓄積され、進捗状況・期限・担当者・課題件数などをダッシュボード上で一目で確認できるようになり、情報の可視化と共有効率が飛躍的に向上しました。

課題の担当者は、自身の課題一覧を期日順に確認しながら対応を進め、解決状況を発信者と共有する運用を採用しました。こうした仕組みにより、関係者一人ひとりが主体的に課題解決へ取り組む姿勢が醸成され、現場では全課題は原則2か月以内に解決するというルールも設けられました。事業主のプロジェクトマネージャーは、まるで文化祭のように、関係者が競い合うように課題を解決している様子が見えて楽しい」と語っており、StreamBIMの活用が現場の協働意識とモチベーション向上に寄与していることがうかがえます。

予算管理との連携:StreamBIMがもたらす業務効率と透明性の向上

全ての課題はデータベースに蓄積された為、予算管理担当者は、蓄積された課題情報から精算が必要な案件を容易に識別できるようになりました。また、見積の再提出時には、すでに合意形成された課題のURLをStreamBIM上で直接共有することで、過去の案件も迅速かつ正確に確認可能となりました。従来は、膨大なメールや分散した資料から必要な情報を収集・整理する必要があり、作業負担が大きく、確認漏れのリスクも伴っていました。
この運用により、発注者・請負業者双方にとって、透明性の高い対応が可能となり、
業務の信頼性とスピードが飛躍的に向上しました。

竣工後のヒアリング会にて

まとめと今後の展望:StreamBIMが築く建設DXの未来

StreamBIM導入当初の勉強会では、参加者が教わる前から3D画面を直感的に操作する姿が見られ、その使いやすさがすぐに実感されました。便利そうだから使ってみようか」「なんとなくやってみるといった軽い気持ちから始まった取り組みは、やがてなくてはならないシステムとして現場に定着しました。

竣工後のヒアリング会では、キャプチャー機能に蓄積されたデータを活用し、AIによる分析も実施。これは当初想定していなかった活用方法でしたが、StreamBIMに蓄積された情報を柔軟に応用することで、次の建設計画への貢献が明確に示されました。今後は、こうしたデータ活用の幅をさらに広げ、施工現場だけでなく、設計・維持管理フェーズにも展開していくことで、建設業界全体のDX推進に寄与していくことが期待されます。

執筆者より

株式会社ストリームBIMジャパン 戸田 善憲

私は30年以上建設業界に身を置き、前職は建築工事の請負会社にてDX推進を担う部門に所属し、StreamBIMの導入から運用フォローまで幅広く携わってまいりました。現在は、株式会社ストリームBIMジャパンの社員として、本記事を執筆しております。StreamBIMは、建設工事における業務効率化や情報共有に大きく貢献する、非常に有用なツールです。 StreamBIMの詳細なご説明や、DX全般に関するご相談をご希望の方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。皆さまの現場に寄り添ったご支援ができれば幸いです。